奥只見湖(銀山湖)–小説「沈める瀧」–八海山ロープウエイ–その3

小説 沈める瀧
■第2章
主人公昇と瀬山はダム建設現場に向かいます、、、

——————————————–
、、、ランドローウ”アーは、たゆみなく昇った。熟練した運転手は相当のスピードでつぎつぎとカーウ”を切った。遠い尾根をこえてここから遥か高く見える道の末端は、そこまでゆくと同じ迂路のつながりでしかなかった。海抜千二百六十米の峠に着いて、一服するために瀬山は停車を命じた。ここには東南と北西の西側の展望があり、年に一二度しかない恵まれた日に当たれば、北西の果てに佐渡ガ島を見ることができた。
周囲には橅(ぶな)、楢(なら)、栃(とち)などの紅葉があり、おびただしい芒(すすき)の穂は、わずかな熊笹の上に秀でていた。北の方に一つの川の源の隠れている暗い影になった山襞が見えた。、、、、、

——————————————–
ランドローウ”アー:この時代のモデルはどんなだったのだろう

①.randcar-02.JPG

②.randcar-06.JPG

randcar-05.JPG
軍需用から開発された

ランドローウ”アーはイギリスの自動車メーカー

今回は、①と②をイメージして読んでいきたいと思います。

■第3章
越冬準備が整い、、瀬山は東京に帰る準備をした、、、

————————————————–
二〇トンの石炭をはじめ、酒、米、乾燥野菜、種々の乾物、缶詰などが大方運び込まれた。
一〇人の技師たちと、一人の若い医師と、二人の炊事夫がすでに越冬を待ばかりになっとり調理場の娘たちは下流の村へ、三人の家政婦はK町に帰っていった。

、、、別れの食事をとって、すぐに帰ることになった瀬山は、食事の間もしきりに大見得を切った。、「食料も燃料も余分に余分にと用意しましたから、皆さんんも心配ありませんよ。カロリーの点もよく研究しましたから」
、、一同は瀬山を送りに出た、、、瀬山はランドローウ”アーの助手席に乗り込んだ。運転手はエンジンキーを差し込み、スターターボタンを押した。始動の音がする。しかしエンジンはかからない。かかりそうな音があいながら、いつまでたってもかかrない。
そのうち音は間遠くなる。運転手はむこになってスターターボタンを押した。
「おい、そんなにやけになってスタータアを押すなよ。バッテリが空っぽになっちゃうぜ」
と田代が怒鳴った。
、、、「瀬山さん故障だ、故障だ。そんな寒いところにいないで家の中で待ちませう」、、、瀬山は意気消沈して、人が変わったようである。
、、「いかん、いかん、フューエル・ボムブがこわれたらしい。修理は今夜一晩かかります。みなさん、すみませんが車を押して車庫へ入れてくれませんか」、、、、

–翌朝—
昇が目を覚ますと、窓掛が妙に明るかった。、、、雪が降っていた、、、瀬山は帰れなくなってしまった。、、、
「雪だな」
「雪だよ」
、、、、瀬山は気力を失って、床の上に胡坐をかいた。、、、
「え、帰れるだろう?」ともう一度瀬山が言った。
「無理だな、君も越冬さ」
瀬山がそれからどんな気違ひじみた苦情の並べ方をしたか、想像してみるがいい、彼は女房の名前を読んだり、子供の名前を呼んだり、、
、、「陰謀だ。これは陰謀だ」と彼は断言した。、、、

———————————————————————————-
総務の仕事が終わって、いざ、帰ろうとしたその日、、瀬山はエンジントラブルによって一日帰りが伸びたのたが、運悪く翌日は大雪になった。この地域は帰るすべがなくなる。6ヵ月の孤立現場での越冬がはじまる、、気の毒な事故である。

つづく

コメント

タイトルとURLをコピーしました